赤痢アメーバ
赤痢アメーバ症について
赤痢アメーバ症は赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)という病原体が感染して発症します。
赤痢アメーバはシスト(嚢子)という卵のような状態で感染力をもっております。
シスト(嚢子)に汚染された食品を食べることで口から感染します。
またシスト(嚢子)が付着した肛門と接触することで糞口感染します。
赤痢アメーバの顕微鏡像
出典:国立感染症研究所
口から入ったシスト(嚢子)は胃の中の胃酸では何も変化しません。
胃から腸に達するとシスト(嚢子)はトロフォゾイトという成虫のような状態に変化します。
腸管で増殖して腸管アメーバとして様々な症状を引き起こします。
中には腸管外にまで感染が発展して、腸管外アメーバに至こともあります。
腸管外アメーバの主なものがアメーバ性肝膿瘍というものがあります。
肝膿瘍のCT像
出典:国立感染症研究所
感染者数について
感染者の年齢分布は幅広い年齢で感染しております。
女性より男性の感染者数が多いのが特徴です。
赤痢アメーバの性別年齢分布グラフ
出典:国立感染症研究所
1990年代は年間の感染者数は200人足らずでした。
2000年以降は急激に増加して、現在では年間1000人を超えております。
原虫感染症の中で最も感染者数が多い疾患となっております。
赤痢アメーバの感染者数
出典:国立感染症研究所
症状について
潜伏期間は2,3週間と言われてますが数ヶ月から数年に及ぶこともあります。
主な症状は大腸での炎症による症状になります。
粘血便、下痢、腹痛などの症状が出ることがあります。
良くなったり悪くなったりを繰り返す人もいます。
ただ日常生活に影響が出るほど症状が出ることは少ないです。
腸管外アメーバなどで肝膿瘍を形成すると発熱を伴うこともあります。
単なる痔と間違われたり放置してしまうケースもあるようです。
赤痢アメーバの粘血便
出典:国立感染症研究所
検査や診断について
顕微鏡による検査とPCR法による検査があります。
顕微鏡による検査は従来から広くされている検査法になります。
病原体を見つけるためには便の保存状態の影響を大きく受けます。
そのため簡便な検査法ですが上手く検出できないこともあります。
PCR法では赤痢アメーバのDNAを検出する検査法になります。
そのため病原体自体がいれば高い確率で検出することができます。
当院ではPCR法による検査を実施しているため精度の高い検査法になります。
検査法は便を少量採取して、それを提出する検査になります。
当院のトイレで採取していただくか、後日採取できたら検体をお持ちいただきます。
検体を提出してから1週間前後で結果が判明します。
赤痢アメーバのPAS染色像
出典:国立感染症研究所
治療について
メトロニダゾールという抗原虫薬を10日間内服して治療します。
治療後に赤痢アメーバがいなくなっているか治癒検査をお勧めします。
予防について
赤痢アメーバに感染している肛門と口が接触するのを避けましょう。
また赤痢アメーバに汚染された不衛生な飲食を口にしないことです。
途上国など流行している地域では生物や生水の摂食しないことです。